2024年4月の「医師の働き方改革」施行に向けた準備について

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※2024年4月に向けた準備の他、勤改センターに相談が多くあった事項についても記載しております。

就業規則整備

就業規則を作成し、届け出ましょう。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し所轄の労働基準監督署への届出が必要です。
就業規則を作成し届け出ている場合は、最新の労働基準法に対応しているか確認が必要です。
公立病院は条例の確認が必要です。
就業規則や条例は、配布もしくは掲示するなどして労働者へ周知しなければなりません。
就業規則は職場で働くためのルールブックです。法令または労働協約に反していないこと、事業場の実態に合ったものであること。分かりやすく明確なものであることが必要です。
就業規則の作成・変更には、労働者の過半数で組織する労働組合又は労働者の過半数代表者の意見を聴き、意見書を添付して労働基準監督署長に届け出が必要です。

雇用契約書(労働条件通知書)

労働者を雇い入れたときには、労働条件を書面等で明示し、内容を説明し、保管しなければなりません。

必ず明示しなければならないこと(書面の交付による明示 ※昇給に関する事項を除く)

  1. 契約期間に関する事項
  2. 期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関する事項
  3. 就業の場所及び従事すべき業務に関する事項
  4. 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇、並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
  5. 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
  6. 退職に関する事項(解雇の事由も含む)

定めをしている場合に明示しなければならないこと

  1. 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
  2. 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
  3. 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
  4. 安全及び衛生に関する事項
  5. 職業訓練に関する事項
  6. 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
  7. 表彰及び制裁に関する事項
  8. 休職に関する事項

※上記は、厚生労働省HPより抜粋となります。
公立病院も上記条件の明示は必要です。
労働条件通知書ひな形は36協定様式と同様に以下よりダウンロードが可能です(R5年12月現在) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoukijunkankei.html

安全衛生管理

常時使用する職員

10人以上、50人未満
衛生推進者を選任
50人以上
産業医及び衛生管理者を選任
衛生委員会を設置

定期健康診断

1年以内毎に1回定期的に所定の項目の健康診断を行わなければなりません。
「深夜業(22時~翌5時)を含む業務」に従事する場合は年2回の健康診断が必要になります。
対象者は「常態として深夜業を1週1回以上または1月に4回以上行う業務」とされています。

面接指導

長時間労働者の面接指導を行わなければなりません。(後述)

勤怠管理

すでにご準備いただいておりますように、全ての医師(勤務医、管理監督者含む)の労働時間の把握が必要です。
勤務医については労働基準法が適用となり「時間外・休日労働の上限規制への対応」「健康確保措置対応のため」、管理監督者については「健康確保措置対応のため」、医師毎に随時、時間外・休日労働が何時間になっているかを確認出来る体制整備が必要です。

勤怠管理のためには、
  • 労働時間の
    ルール明確化
  • 労働時間管理
    方法の決定
  • 給与制度の確認
  • 業務分担・業務
    内容の見直し
といった取り組みが必要になります。

上記の取り組み後、院内に周知し運用することが重要です。

取組例

【労働時間のルール明確化】
労働時間と自己研鑽の区分(大原則は使用者の指揮命令下に置かれているかどうかにより判断)
【労働時間のルール明確化】
オンコール待機(待機時間中に「労働から離れることが保障されているかどうか」により判断)
【労働時間管理方法の決定】
タイムカードや、ビーコンシステムの導入と運用方法の決定(運用マニュアル作成等)

医療機関の適切な36協定の締結

法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えて、または法定休日(毎週1回、もしくは、4週4日以上)に労働させる場合には、時間外労働・休日労働に関する労働代表との協定(36協定)を締結し、労働基準監督署長に届け出なければなりません。
医師の時間外・休日労働の上限規制の適用開始に伴い、医療機関が届け出る36協定届の様式が新しくなりました。
前年度の時間外・休日労働の実績を元に締結します。
万が一締結した時間外・休日労働を超える場合は、36協定自体の見直しを行う仕組みも必要です。
(※B、C水準必須)

令和6年3月31日まで
【適用猶予事業(建設事業、自動車運転の業務、医師等)】
時間外労働・休日労働に関する協定届(共通様式第9号の4)
令和6年4月1日以降
【医業に従事する医師を含む場合】
時間外労働・休日労働に関する協定届(病院等は新様式第9号の4)

※専門業務型裁量労働制に関する協定届も(令和6年4月1日以降)変更になります。

36協定の様式について

以下よりダウンロードが可能です(R5年12月現在)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoukijunkankei.html

宿日直許可

いわゆる寝当直を労働時間として扱わないためには労働基準監督署長の許可が必要です。
医師に限らず、宿日直業務を実施している場合、労働基準監督署長の許可が無い場合は、労働時間になります。

過去に宿日直許可を
取得している場合
現在の宿日直業務の内容が、過去に取得した宿日直許可と合致しているか確認しましょう。
内容が変わっている場合は再度許可の取得が必要です。

※病院の移転や建て直し等でも再度許可の取得が必要になります。
また許可書の控えが無い場合も再取得しておきましょう。

直近で宿日直許可を
取得した場合
宿日直許可どおりの内容・条件で宿日直が実施されているか確認しましょう。
宿日直許可書を紛失しないように注意して下さい。
これから宿日直許可を
取得する場合
1~3か月程度の実績データが必要になります。
申請に必要な資料は
  • 断続的な宿直又は日直勤務許可申請書
  • 労働条件通知書、雇用契約書の写しなど、労働条件が分かるもの
  • 宿日直の当番表、シフト表など
  • 一定期間の宿直又は日直の勤務の内容が分かる資料
  • 宿日直勤務者の賃金一覧表及び宿日直手当額が分かる資料

※これまでの申請で指摘を受けた事例

  1. 医師の実労働時間の把握

    医師の対応時間が記録されていない、医師の対応開始時刻が記録されているが対応終了時刻が記載されていない、診察から検査終了までの待機時間の記載、死亡診断書作成時間等の記載

  2. 許可申請書記載内容

    [一定期間における1人の宿直(日直)回数]
    宿直は週あたりの医師1人の宿直回数、日直は月あたりの医師1人の日直回数を記載すること
    [総員数]
    宿直・日直ともに派遣医師も含めた当該宿日直に入る人数を記載します。
    [勤務の態様]
    定期回診や病棟管理、検食がある場合は検食も記載します。ここに記載されていない業務は実働扱いになります。

追加的健康確保措置

1)勤務間インターバル制度

勤務間インターバルの義務範囲

A水準医師
努力義務
A水準以外医師
(B・C水準)
義務

勤務間インターバルの義務範囲

通常の日勤および宿日直許可の
ある宿日直に従事させる場合
始業から24時間以内に9時間の連続した休息時間を確保
(連続勤務制限時間15時間)
うち【C-1水準臨床研修医】
始業から24時間以内に9時間の連続した休息時間を確保
(連続勤務制限時間15時間)
宿日直許可のない宿日直に
従事させる場合
始業から46時間以内に18時間の連続した休息時間を確保
(連続勤務制限時間28時間)
うち【C-1水準臨床研修医】
始業から48時間以内に24時間の連続した休息時間を確保
(連続勤務制限時間24時間)
※臨床研修における必要性から、指導医の勤務に合わせた24時間の連続勤務時間とする必要がある場合

※下記記載の「代償休息」を付与することを前提として勤務シフトを組むことは、原則として認めれらておりません。

【例外】
個人が連続して15時間を超える対応が必要な業務(例:医療機関において、その医師にしか遂行することが困難である手術業務)が予定されている場合は、代償休息の付与を前提とした運用が認められます。
ただし、その業務の終了後すぐに代償休息を付与する必要があります。

2)代償休息

代償休息とは
上記、勤務間インターバルを確保した勤務シフトを作成したが、緊急業務等やむを得ない理由により発生した労働により上記休息時間が確保できなかった場合は、事後的に代償休息を与える必要があります。

代償休息の時期
代償休息は翌月末までに付与します。
代償休息の注意点
【宿日直許可のある宿日直中に、通常勤務時間と同態様の労働が発生した場合は、代償休息を付与するよう配慮する必要があります。

3)長時間労働医師への面接指導

時間外・休日労働が月100時間以上となることが見込まれる医師に対しては、面接指導実施医師による面接指導を実施しなければなりません。

対象医師
医業(診療)に従事する医師で、勤務医の他に管理監督者も対象となります。

※産業医、健診センター・血液センター等の、「診療を直接の目的とする業務」を行わない医師は除かれます。

面接指導実施時期
月の時間外・休日労働が100時間以上となる前に実施する必要があります。

※常時労働時間の把握が必要、また毎月一定時期に面接指導予定を定めておく必要(100時間超になる頻度が高い場合)があります。

※A水準適用医師は、疲労の蓄積が認められなければ100時間以上となった後遅滞なく実施することも可能です。

※副業・兼業がある医師はどこの医療機関で面接指導を実施するかあらかじめ確認が必要です。

面接指導実施医師
①面接指導の対象となる医師が勤務する病院または診療所の管理者でないこと
②面接指導実施医師養成講習会の受講を終了していること

※面接指導の際に面接指導実施医師が面接指導対象医師の直接の上司とならないような体制を整備することが望ましいです。

面接指導実施医師養成講習会:面接指導実施医師養成ナビ

https://ishimensetsu.mhlw.go.jp/
より講習(eラーニング)を受講、確認テストに合格することで終了証が発行されます。
ロールプレイ研修の申込や、「長時間労働医師面接指導結果及び意見書」の様式例や、「長時間労働医師の健康確保に関するマニュアル(改定版)」へのリンクも掲載されています。

※本オンライン講習の終了証を受領するためには、「医師等資格確認検索システム」に登録されている必要があります。未登録の場合は、養成ナビの記載事項をご確認ください。

面接指導の流れ

  • 時間外・休日労働が
    100時間見込
  • 面接指導実施医師による
    面接指導
  • 面接指導実施医師による
    書面作成
  • 管理者・事業者へ
    書面の提出
  • 管理者・事業者による
    健康確保措置
  • 書面の
    5年間保存

※面接指導結果は主たる勤務先、副業・兼業先それぞれに提出が必要です。

時間外労働の上限規制への対応

(今後のB、C水準の取得の必要性)

医業に従事する医師の勤務医の時間外・休日労働時間が原則として年960時間が上限となります。
年960時間を超えて1860時間の上限規制を適用する場合には医療機関勤務環境評価センターの評価を受けたあと、県に対し「特定労務管理対象機関」の指定申請を行い指定を受ける必要があります。

特定労務管理対象機関の指定申請を行う医療機関は、「時短計画」の作成が義務化されます。

A水準の医療機関は時短計画の作成は努力義務となります。
令和6年度分の申請は既に終了しておりますが、令和6年度以降に申請が必要になる場合は改めてご確認下さい。
「医療機関勤務環境評価センターの評価」「特定労務管理対象機関の指定」ともに一度指定を受けると3年間有効になります。

※3年以内の指定内容の変更申請も可能です。

※医療機関勤務環境評価センターホームページ(申請方法等はこちらをご覧下さい)
https://sites.google.com/hyouka-center.med.or.jp/hyouka-center

※特定労務管理対象機関の指定手続きについてはこちらをご覧ください。
https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/iryo/ishihatarakikata.html

※※※特定労務管理対象機関(B、C水準指定)の医療機関は毎年の評価、時短計画の見直しが必要です。※※※